SOCIETY

Photo:丹下恵実・鈴木裕太

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PROIFILE

鈴木裕太
craut一級建築士事務所代表 内装から出店ブース、様々な空間デザインを手掛ける。 人の想いを空間に反映させることにこだわったデザインを意識し、活動する。 建築にかかわらず、地域との様々な仕組みや関係性を作り、地域活性化等の活動をしている。
河合風太
「森、道、市場」出店責任者 東京での料理人経験を経て、昨年地元の愛知に帰省。 足助町「小松屋」で料理人をする傍ら、様々なイベント出店やケータリングに携わる。 今回の森、道、市場も地元でのイベント出店のきっかけにしたく出店を決めた。
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レンタル足場活用の可能性 「森、道、市場2022」仮設店舗は足場機材でDIY!

2022年5月27‐29日、全国から500店以上の素敵なモノやおいしいごはんが集まる市場と、様々なジャンルの音楽が演奏されるイベント「森、道、市場2022」が愛知県蒲郡市ラグーナビーチで開催された。“空” 気感と“間” 合いを意味する“空間”がイベントのコンセプト。その土地が持つ魅力や環境の変化など、五感で感じることのできる空気感を大切にしている。人、自然、食、作品、音楽の関係性を大切にし、地域も時代もジャンルも混ざり合うことで、まだ見ぬ素晴らしい物事の遭遇や、新たな発見と体験の機会を提供している。 このイベントに出店した東京のカレー屋さんを、愛知県足助町にある「小松屋」の皆さんが、足場機材を駆使した仮設店舗でお手伝いされた。 足場レンタルの相談は、以前に「タネリスタジオ」という展示会のギャラリー設営で足場を使った経験がある建築士の鈴木裕太氏から頂いたのがきっかけだった。 どのような“空間”を創り出し、どのような発見と体験ができたのか。出店責任者の河合風太氏と、足場を使った設計を率いた鈴木裕太氏に対談取材させて頂いた。

Photo:丹下恵実・鈴木裕太

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鈴木裕太
craut一級建築士事務所代表 内装から出店ブース、様々な空間デザインを手掛ける。 人の想いを空間に反映させることにこだわったデザインを意識し、活動する。 建築にかかわらず、地域との様々な仕組みや関係性を作り、地域活性化等の活動をしている。
河合風太
「森、道、市場」出店責任者 東京での料理人経験を経て、昨年地元の愛知に帰省。 足助町「小松屋」で料理人をする傍ら、様々なイベント出店やケータリングに携わる。 今回の森、道、市場も地元でのイベント出店のきっかけにしたく出店を決めた。
取材中は、終始笑顔で、温かいエネルギーに満ちていたお二人 一級建築士の鈴木裕太氏(左)と料理人の河合風太氏(右)

足場機材をメインに店舗設営、企画に込められた想い

普段どんな活動をされているか教えてください。

 

鈴木:僕は、設計事務所をやっておりまして、タネリスタジオのような内装や今回の出店ブース等の設計をメインで行っております。それ以外のところにも仕組み創りやお互いの関係性創り、町のこととかも興味を持って活動しています。活動の中で飲食のお手伝いをしたりもしています。

河合:僕は料理人で、東京で活動していましたが、縁があって去年の春に拠点をここに移しました。この辺りでは、地域再生事業をやっていて、それにも興味があるので参加しています。実際に、この建物もその改修プロジェクトの一つでして、それに関わりながら森道のようなイベントもしています。

 

小松屋の外観にて

鈴木:この建物は現在、オーナーさんと一緒に、いろんな人が出逢える場所にしたいと改修のプロジェクトが動いているんです。実際に、今日は改修プランの打ち合わせがあります。

 

河合:近くにある香嵐渓は、紅葉シーズンだけではなく、他にもいい所があるので、それを発信していきたいですね。再発見がたくさんあると思います。


鈴木:こういう地域に限らず、東京など他の地域で経験を積んできた人脈があるので、それを軸にしてイベントなどを色々展開できそうだと思っています。

 

河合:「はじまりアパートメント」という企画で、 この町でなにかあるかも? と興味を持った若者が集まり、1か月シェアハウスをしました。そのメンバーが森道も手伝ってくれたんですけど、こういう人のつながりも増やしていきたいと思っています。

どのような流れで足場を使うことになったのですか?

 

鈴木:僕たちはここで知り合って、森道の話ですぐに意気投合しました。

 

河合:3月頃、森道をやらないかと打診を受けていたんです。確か(鈴木さんと)出逢ってから23日位だったんですけど、目の前にいたので、「いっしょにやらない?」って聞いたら、めっちゃノリ良く「やりましょう、やりましょう」って二つ返事でした。

 

鈴木氏は、愛知県瀬戸市「タネリスタジオ」で行われるギャラリー設営でも足場の活用経験がある

前回に続き、今回も足場の活用を考えたのはなぜでしょうか?

鈴木:1回目の利用で、足場機材の可能性に気づいたのが大きかったです。フレキシブルで可変性があって、拡張性があるのをすごく面白いと思っています。足場を持って行ってその場で組み立てられるという、身軽で軽やかな感じがこのブースと相性がいいですね。別な言い方すると、「都合がいい」とも言えますかね。それがいい所だと思いました。

足場を利用する話があったとき、どのような印象でしたか?

 

河合:違和感はなかったですね。「あ、いいな。」と、直感で良いなと思いました。足場機材自体が知らないモノじゃなかったですし、質感もわかっていて、シンプルなので何も邪魔しないイメージがありました。現場感みたいなのが好きで、コンクリートの剝き出しのデザインとかに近いかなという印象でした。

 

鈴木:町を一緒に歩いているときに、工事現場をみて「これっすねー」なんて話していて、そういう確認の仕方もしていましたね。なので、お互いイメージはすぐ共有できました。

 

足場が様々なことに利用できることや、施工が複雑でないことを知っていましたか?

河合:全然知らなかったですね。単管とかそういうのは良く見ていましたが、足場ということは認識していませんでしたね。インテリアになるとも思っていませんでした。施工に関しては、「仮設」という時点で、難しい印象はなかったですね。金槌で力入れている時は、「俺たち、やってるな—ッ!」っていう気がして施工が楽しめました。大工さんへのあこがれもあったり()

たくさんの方が来場されるイベントで、仕上りに不安はありませんでしたか?

鈴木:タネリスタジオを経験しているので、全く不安はなかったです。でも、2日目は風がめちゃくちゃ強くて屋根が外れてしまいました…屋根がはがれても、足場だけは微動だにしませんでした。

 

河合:周囲の店舗は強風でほぼつぶされていました。うちの場合、残ったのは足場だけでした () 堅牢、まさに堅牢でした。

シンプルだけど機能性は抜群、イベント中の周囲の反応

装飾やレイアウトでこだわったところはありますか?

河合:装飾を派手にするとメッセージ性が強すぎて、中とのギャップが生まれてしまう心配があったので、内容を邪魔しないようにしました。あくまでシンプルということを意識しましたね。

 

鈴木:仮設と言ってもお店ですので、動線は打ち合わせしました。商品の売り方や、料理の仕込みの方法は、第一条件として拘りました。

お客様からの反応はどうでしたか?

 

鈴木:写真を撮っていかれる方はかなりいらっしゃいました。変わった素材で作っているな、って感じで。

 

河合:完成体がシンプルだから「まだ完成しないの?まだ建設中?」と冗談を言われる方もいらっしゃいましたよ()

 

施工してみてどうでしたか?

鈴木:前回も経験していますが、簡単さだけじゃなく、スピード感があるイメージを持ちました。設営経験がない人たちを巻き込んでやりましたが、施工方法がすごく伝えやすかったです。DIYをやる時って、木造で建てる場合は、事前に細かい確認が必要ですけど、足場の施工は、初めましてのメンバーでも出来ました。そのフラットな状態からぎゅっと立ち上がる感じのスピード感は良かったです。

 

河合:それで言ったら、自分たちメンバー構成と、足場の完成の速さは似ていたかもしれないですね!施工に関しては、簡単とは思いましたが、やはり裕太君がいたからできたんですよね() 最初から一人だったら、「ナニコレ」って思っていたかもしれない…やり方を聞けば、すぐにできるものでした。

可能性は無限大、足場活用が活きる世界観

多種多様なシーンで足場を利用して、足場に対する考えは変わっていきましたか?

 

鈴木:考えは一貫していますね。建設現場以外で使う足場の用途に大きく着目していて、自由な使い方の可能性を感じています。その中で、僕がちょっと面白いと思っているのは、いわゆる単管足場ではなく、ユニットのような、モジュールを活かすことが自分のテーマになりそうなことです。家を組み立てていく大工さんの考え方と足場機材の活用は似ていると思います。決めた枠の中でモジュールをどう当て込んでいくかを考えるのが、かなり面白いです。そのメリットを生かしていくことが今後必要だと思っていますね。まぁ、簡単に言うと、なんか組みやすい便利なモノなので

 

河合さん:レゴだよね!

 

鈴木さん:そうそう、そういうイメージ。今回だと、その場で棚の高さなどを調整できたので改めて使いやすいと感じました。現場で細かく可変できる感じが良いし、そのプロセスも楽しかったし、強度面の安心ができたのも良かったです。

 

足場機材のカセツ性を活かしてやってみたいことは何ですか?

 鈴木:今回は足場機材をレンタルしましたが、買い取っていろんな場面で使いたいですね。テントを運ぶ感覚で()。足場機材でBBQ場を組んだりできないのかな?と思いました。

 

河合:BBQいいね!サウナとか、色々やりたいですね。23階建てにして、流しそうめんなんかできないかな()カセツ式の流しそうめんなんか流行るんじゃない?

 

鈴木:楽しそう!子供の遊具みたいなのにもなりそうですね。

今後の足場機材の可能性と足場を使って発信したいことはありますか?

鈴木:先ほど気軽さの話をしましたが、より常設的なことにも踏み込めないかな?と思います。タネリスタジオでは常設的なもので、そこから増設していくイメージで足場を使用したので、その増設プロジェクトをやっていけたらと思っています。足場が細胞分裂する生き物みたいに増えていけばおもしろいなって思います!


もう一つの切り口としては、足場をある種の資産的な捉え方ができれば良いとも思います。足場を資産として持っていて、必要でなくなったら売るというような考えをもってもいいかなと思っています。廃棄しないので循環する感じが、環境にも良いですし。

 

河合:何年も使えるし、価値が変わらないものですしね。投資的な考え方はいいですね。錆びると危ないですけど、錆の良さとか逆にそれがカッコいいな、なんて思います()

今後は、今やっている地域活性化の活動には使っていきたいので、そこが発信の場になると思います。

これから利用を考えている人へのアドバイスをお願いいたします。

 

河合:活用自体は難しいことではないと思いました。素材がシンプルなので、特色を出したいなら装飾アイテムはいると思いますが、シンプルな分やりたいようにできる印象があります。凝ったら難しいけど、活用のハードルは高くないと思います。

 

鈴木:利用の間口を広めていこうとしているASNOVAさんの活動自体に価値があると思います。間口を知らないユーザーが多いはずなので、こういった発信をしていけば可能性は広がると思います。

 

最後に、お二人にとってカセツとは何ですか?

 

河合:カセツとは結構、自分の生き方的に近いかなと思います。あんまり構えない感じで、

自由に移動しながら、どこでも行けるし、どこでも作れる所とか。行きたいところに行ける感じで気楽さが良いです。

 

鈴木:風太さんはケータリングをやられていて、現地の食材を仕入れて即興で調理したりしていますもんね。まさにカセツ性()

 

河合:そもそも構えて、作りこむというのが苦手ですからね。まさにカセツはすごくあってるかも()

 

鈴木:僕としては、ツール的な見方するんですけど、何かの隙間を縫っていく印象です。仮設は自由度が高いものですね。建築は法規制が多く硬いですが、仮設の()なんて入れると、自由度が一気に上がったりするので、そういう規制や仕組み、縛りの隙間を埋めていけるツールだと思います。

 

編集後記

 様々な活動に熱を持っている二人が出逢ったのは、ここ「小松屋」。オーナーが大切にしているコンセプト通り、色々な人の遭遇の場となっている。取材に伺って、素敵な場所であることを肌で感じてきました。お話を伺っている最中、Amazonの届け物が来ました。それは、近所のおばあさんが欲しかった電球。なんて、温かいコミュニティーがあるのだと、心がほっこりとしました。

 

足場は、「彼らによって仮設され、彼らの仮説を立証していく」1つの手段だと思いました。彼らが創り出していく「明日の場」が楽しみで仕方ない。これからも是非、地域再生など社会に役立つ活動に足場を利用していただきたいと願っております。

 

小松屋
元うどん屋の建物を現在実験的に営業中。来年から宿泊ができる複合施設に改修予定。

住所:愛知県豊田市足助町新町34

Instagram

https://www.instagram.com/komatuya2021/

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