IR

Text:吉澤 瑠美
Photo:西田 香織

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PROIFILE

青山 永
エスエムオー株式会社。日本企業において、パーパスの必要性を痛感し、2021年よりジャスティン・リーと共に、パーパス・ブランディング及びパーパス・マネジメントに基づいたコンサルティング業務を行う。事業会社での実務経験、様々な業種・業界でのコンサルティング経験、そして幅広いネットワークを生かし、ベストなプロジェクトチームを作りとプロジェクト推進を行う。本件においては、計画立案、実行管理、各種インタビュー、情報分析などを含む、すべての実務においての責任者としてプロジェクトをリードした。
宮内 春子
エスエムオー株式会社。ブランディングコンサルタントとして、様々な業種におけるブランディング活動を支援。パーパス・ブランディングでは、その策定から浸透まで、リサーチ、プロジェクト進捗管理、ワークショップ開発・運営、クリエイティブ管理まで、幅広い経験を有する。また、策定後の浸透領域、そして様々な企画や開発の実行支援においても数多くの企業との取り組み実績を持つ。本件においても、すべての局面においてプロジェクトを推進した。
佐藤 唯
ASNOVA経営企画室。2021年8月入社。ブランディング活動やIR・広報の業務を行う。
阿南 元春
ASNOVA経営企画室。2022年2月入社。ブランディング活動やIR・広報の業務を行う。
IR

これからの社会でASNOVAがやるべきことは?パーパスが導く足場業界の「明日」

≪「カセツ」の力で、社会に明日の場を創りだす。≫社長から新入社員まで、役職や社歴を問わず広く社員の考えを取り入れ策定されたこのパーパスは、ASNOVA社員一人一人の指針として、徐々に浸透し始めています。しかし一方で「まだやるべきことがある」と語るプロジェクトメンバー。パーパスは何のために作られ、今後ASNOVAにどのような効果をもたらすのでしょうか。

IRやブランディングで社内外への発信を行っている事業企画室の阿南元春さんと佐藤唯さん、パーパスブランディングに並走しているエスエムオー株式会社の青山永さんと宮内春子さんにパーパス策定プロジェクトの裏側、そしてこれからを伺いました。

Text:吉澤 瑠美
Photo:西田 香織

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青山 永
エスエムオー株式会社。日本企業において、パーパスの必要性を痛感し、2021年よりジャスティン・リーと共に、パーパス・ブランディング及びパーパス・マネジメントに基づいたコンサルティング業務を行う。事業会社での実務経験、様々な業種・業界でのコンサルティング経験、そして幅広いネットワークを生かし、ベストなプロジェクトチームを作りとプロジェクト推進を行う。本件においては、計画立案、実行管理、各種インタビュー、情報分析などを含む、すべての実務においての責任者としてプロジェクトをリードした。
宮内 春子
エスエムオー株式会社。ブランディングコンサルタントとして、様々な業種におけるブランディング活動を支援。パーパス・ブランディングでは、その策定から浸透まで、リサーチ、プロジェクト進捗管理、ワークショップ開発・運営、クリエイティブ管理まで、幅広い経験を有する。また、策定後の浸透領域、そして様々な企画や開発の実行支援においても数多くの企業との取り組み実績を持つ。本件においても、すべての局面においてプロジェクトを推進した。
佐藤 唯
ASNOVA経営企画室。2021年8月入社。ブランディング活動やIR・広報の業務を行う。
阿南 元春
ASNOVA経営企画室。2022年2月入社。ブランディング活動やIR・広報の業務を行う。
左からASNOVAの阿南元春さん、佐藤唯さん、エスエムオーの青山永さん、宮内春子さん

通常の3倍!スピード感を持って進められたパーパス策定プロジェクト

パーパス策定プロジェクトはどのような流れで始まったのでしょうか?

佐藤:これまでも、ASNOVAでは経営理念を全うしてきたのですが、社員の中には理解している人もいれば、不十分な人もいて、社歴や配属などによって全社に浸透していないという課題がありました。存在意義を表すパーパスを策定することで、社外にも社内にも会社の存在意義を示し、それを軸として一貫性のある事業を行うことができるのではないかという考えで、パーパスを策定することになりました。

「経営理念」と「パーパス」の違いは何ですか?

青山:一般的に「経営理念」は包括的な概念で、自分たちの理想的なあり方、価値判断の基準、そういった企業の在り所となるもの全体を指しています。会社によって社是や社訓、ミッション、フィロソフィー、さまざまな言葉で表されますが、最近注目されている概念が「パーパス」です。

経営理念は解釈や定義が幅広いですが、パーパスはかなり明確で、つまり何のために存在しているのかということを規定したシンプルなものです。それをきちんと明確にすることが、企業の経営やマネジメント、ブランディングに大事だということで、この数年関心が高まっています。

上田社長から伺ったのは、社員が新規事業に挑戦し事業を成長させていく上で、実行すべきか否かの判断基準が難しい、と。儲かるからやる、儲からないからやらないということではなく、社会的に意義があるか、自分たちの会社としてやるべきものかという判断基準、軸を見出す指針になるのがパーパスなのではないかということで昨年の9月頃にご相談を頂きました。

昨年の9月頃というと、ちょうどASNOVAが新しいメンバーを迎え組織拡大に動き始めた時期とも重なるのではないでしょうか。

佐藤:そうですね。重なります。同時期ぐらいから徐々にメンバーが増えて、新規事業にも力を入れていこうとしていた時期ですね。

宮内:新規事業を進めていく上でも、より多様な人材を募るためにも、なぜこの事業をやっているのかを明確に打ち出したいということだと理解しました。

このパーパスは、どういうプロセスを経て策定されたのでしょうか。

宮内:通常は最初の情報収集フェーズとして、社内外の方々にヒアリングをするのですが、ASNOVAの皆さんはスピードを重視されていたので、経営層4名にマネジメントインタビューを行いインプットとしました。同時に弊社でデスクリサーチをして、ASNOVA社員の方々と一緒にワークショップ形式で策定しました。

部門横断で15名ほどの社員に集まっていただいて、3回のワークショップを実施しました。ブランドアイデンティティについても含めると6回、策定後の浸透のための施策まで考えたので全部で8回のワークショップを実施しました。

青山:その8回を1か月半というかなり早いペースで実施しました。ASNOVAさんは何事も良い意味でスピーディーに取り組まれていますね。社長とお会いしてからプロジェクトスタートまでもあっという間でした。

ちなみに、通常はどれぐらいの期間を費やすものなのですか?

青山:多くのプロジェクトでは3か月から6か月。時間をかけて取り組まれる場合は1年に及ぶこともあります。単純に組織が大きかったり、従業員数が多かったりすると、やらなければいけないことが増えるので。

宮内:大きな組織の場合、「プロジェクトを始める」という話を社内に通して承認を得るまでに3か月かかることも珍しくありません。

青山:ASNOVAさんと実施したような8回のワークショップをやるとすれば、標準的には3~4か月はかかることが多いですね。

とはいえ、ASNOVA社内でもこのスピード感はかなり大変だったのではないでしょうか。

佐藤:「スピード感を持ってやりましょう」というのは急に社長が言い始めたわけではなく、全社的にすでに浸透していることなんです。ワークショップの参加メンバーも、声掛けをしたら「分かりました」と二つ返事で引き受けてくれたので、すぐワークショップに取りかかることができました。

宮内:メンバーを選ぶだけで1か月かかる企業もある中で、すごいことです。

佐藤:人事制度の一環で、”ASNOVA Recurrent”という外部の教育機関を活用して、知識を補完し、個人の成長を応援する制度があります。その制度を利用している社員が9人いたので、そのメンバーを中心に声を掛けました。「会社のために成長しよう」「成長したいから学校に通いたい」と日頃から高い意識を持つ人に参加してもらったほうが、パーパスも良いものになるのではないかと考えました。
青山:それに加え、社長以下役員の3名も参加されて、最終的には現場のリーダー層の方まで、いろいろなメンバーが混ざった状態でワークショップを開催しました。他社の場合は上の人がいると気を使って発言できなかったり、上司の方が全て話してしまったりするので、階層ごとにチームを分けたり参加回数を調整したりするのですが、ASNOVAさんの場合は、社長も新しく入られた方もフラットに議論されていたのがとても印象的でした。

改めて感じた本社と現場のギャップ、それでも目指している方向は一つ

今回のワークショップを通じて、皆さんはASNOVAという組織についてどんなことを感じられましたか?

佐藤:現場に出ている人と本社で働いている人とでは、目線も違うし、感じていることも違います。今回のワークショップでそのギャップを再認識しつつ、意見を出し合うことで多少はギャップが埋められたんじゃないか、という手応えも感じました。

立場によってギャップがありつつも、「足場」というキーワードは全員に共通しているので、結局目指している方向性は一緒なんだな、とも思いましたね。

青山:私は、積極的に発言されるマインドセットをお持ちの方が多いと感じました。ワークショップでは、一人目の発言者になりたがらない、場が温まるまでに時間がかかるというのはよくあることです。でもASNOVAさんの場合は皆さんとてもポジティブで、Aさんの意見に対してBさんが被せるような、発展的な議論がたくさん行われたので、良い形で進めることができたのではないかと思います。
宮内:私が印象的だったのは、ASNOVAさんがレンタルに誇りを持っていらっしゃる点です。上田社長は、お会いした当初から「レンタルはCO2削減の問題や、今の社会課題に貢献できているビジネスだ」とおっしゃっていましたし、社員の方々もレンタル業を循環型社会に貢献できるモデルとして捉えるのが伝わってきました。策定したパーパスの中に「社会」という言葉が入ったのも、社会貢献を常に意識してきた会社だからですよね。

ワークショップを経て、《「カセツ」の力で、社会に明日の場を創りだす。》というパーパスが決まりました。策定してから現在までの社内の反応はいかがですか?

佐藤:社内向けのチラシや、社外に配布するチラシを作る際に、社内から「チラシにパーパスを文言として入れたい」と言われるようになりました。ただの標語としてではなく、パーパスが会社の一部として捉えられていることが嬉しかったです。もしかしたら一言一句の細かい意図までは理解していないかもしれませんが、パーパスを意識してもらえているというのは、みんなで作った甲斐があったなと思います。

宮内:プロジェクトの最初に目的を設定するのと同じ発想で、このパーパスを起点にしようという皆さんの意識がとても伝わってきます。

今年の2月に入社された阿南さんは、パーパスを客観的に目にしながらASNOVAへ入社されたことと思います。外からご覧になって、どうでしたか?

阿南:ASNOVAのパーパス自体は入社前から目にしていましたが、ワークショップまで行われていたことは入社するまで知りませんでした。会社自体の熱が強く、社長もいち社員の立場になって一緒に考えるという点は、非常に魅力的だと思いました。

このパーパスは、社内の皆さんにどれぐらい浸透していると感じますか?

佐藤:パーパスが策定されたこと自体は知っているかもしれませんが、パーパスを説明できる人はまだ一部だと思っています。たとえば、本社のメンバーには浸透していても、全国の機材センターや営業の方にも認識を共有できているかという不安な部分があります。
宮内:先日、策定プロジェクトの一環で、パーパスを浸透させるための1.5か年計画を立てました。皆さんに理解してもらって、もっと共感してもらえるようになって、さらにそれを行動に移すためのロードマップのようなものです。

パーパスをより丁寧に伝えるパーパスブックの制作だけでなく、会社案内やホームページも刷新しましたが、今後どういうことをすればより効果的か、というのは現在企画中です。先日のワークショップで意見やアイデアを出していただいたので、その中から現実的で効果が高そうなものをどんどんやっていく予定です。
阿南:本社にいるとなかなかそのギャップを掴みにくいのですが、現場の第一線で働いている方はパーパスに触れる機会がそもそも少ないので、イメージしにくいものだと思います。パーパスを浸透させるための企画として動画やパーパスブックをつくったりしていますが、皆さんから能動的に感じて動いてもらえるような施策も必要だと思っています。

協力会社や現場の声も取り入れ、パーパスを起点に新しいチャレンジに取り組む

今後、機材センターや各地方の営業部の皆さんを含め、全社隅々までパーパスが行き渡ったら、ASNOVAはどう変化すると思いますか?

佐藤:パーパスが社内全体に浸透すれば、次は社外にも浸透していくような気がしています。現状、社内でパーパスを共有することによって、新規事業などの新たな発想がいろいろなメンバーから出てきているので、全社に浸透したら各地の機材センターの方からも「課題解決のためにこんな事業をやりたい」という声が出てくるかもしれませんし、さらに「ASNOVAはこんな軸を持って頑張っているんだ」と社外にも広まって、業界の活性化につながるかもしれない、と期待しています。
青山:一般論で言えば、パーパスには社員の判断基準になったり、内部の結束に繋がったりするので、働く方々が迷わずにチャレンジできるという効果があります。新規事業に積極的に挑戦されているASNOVAさんは、パーパスにある「カセツ」をうまく活用し、まさに新しいチャレンジに取り組まれていますよね。

また、パーパスの対外的な意味合いとして、ASNOVAという会社がどういう会社で、他と何が違うのか、何を成し遂げようとしているのかということがより明確になります。そうすると、一緒に新しいものを作り出そうというコラボレーターや協力会社が集まりやすくなるでしょうね。

それに、ASNOVAさんは上場されたことで、社会的な存在意義が今後ますます重要視されてくると思います。自社の話だけではなく、業界の活性化や、業界のイメージを変えていくという大きい志もパーパスには込められているので、それが発信されるということは外に向かっての強いメッセージになりますし、それがASNOVAさんのブランド価値の向上につながっていくんじゃないかと思います。

パーパスをより社内に浸透させるための施策として実行中のものはありますか?

阿南:まだ模索中です。いろいろな施策を考え、実行していく部分をSMOさんと進めている最中です。

佐藤:すでにアイデアはたくさんあります。インナーブランディングとして社内報やオウンドメディアで定期的にパーパスについて発信することもできますし、社外に発信するもので言うと、動画を作ってパーパスを発信しようという大きい企画もあります。その動画を見たらASNOVAが全部分かるというか、ASNOVAの存在価値や魅力が伝わるようなものを作りたいなと思っています。
宮内:パーパスの理解という点でもブックを配っただけでは足りないので、それをいかに補強していくかというのは今後の課題ですね。既存の研修に一コマ入れるのか、動画を作るのか、理解のフェーズでもできることがあると思っています。

個人的に楽しみなのは、現場の方々へのヒアリングです。ワークショップでもアイデアをいくつか頂きましたが、「自分たちが理解するためにこういうツールが欲しい」「こういう企画が欲しい」というご要望があればなるべく実現したいと思っています。どんな案でも効果があるならぜひ実現したいので、アイデアは引き続き募集中です。
阿南:私たち本社メンバーやエスエムオーさんをはじめとした協力会社の方々で様々な案を出すことも大事ですが、それ以上に、社外との接点が多い現場の方の意見を反映したほうが社内外への浸透は早いんじゃないかと思っています。僕らは思考が固まってしまっている部分もあるので、最前線の方々にぜひ力を貸してほしいですね。

協力会社や現場の声も積極的に取り入れられるのは、ASNOVAならではの強みですね。だからこそ新しいアイデアや新しい動きが活発に生まれるのかもしれません。

青山:ちゃんと振り返って、記事化して社内外に発信するというこの企画も素晴らしいですよね。パーパスウォッシュという言葉があるように、作って終わりとか、みんな作っているからうちも作るとか、掲げること自体が目的になっているケースが散見されますが、ASNOVAの皆さんはパーパスを本質的にとらえていらっしゃるなと感じます。

これは中期経営計画書にも書かれていることですが、ASNOVAさんでは新しい領域としてエンドユーザーの方とつながるビジネスの開発を計画されています。そこで素晴らしいなと思うのが、ASNOVAが行うべきBtoCは何なのか、パーパスを基点に、実際の事業活動に結びつけて考えておられる点です。

浸透や理解を深めることには終わりがありませんが、新しい事業や既存事業の見直しにもさっそくパーパスを具体的に活用されている。そこもスピード感があって素晴らしいと思います。

エスエムオー株式会社
ブランディングとイノベーションを支援するコンサルティングファーム
WEB:https://www.smo-inc.com/index.html

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