【循環型プロジェクト対談vol.3】「楽しそう」からの始まり。等身大の視点で再発見した「ASNOVAらしさ」
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PROFESSIONAL
Text:光田 さやか
Photo:小林 翔
PROIFILE
国内最大級のアートフェスティバル「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」が、10月10日(金)〜13日(月)、東京・天王洲で開催されました。
今年で4年目を迎えるMEET YOUR ART FESTIVALは、アートを軸に、音楽・ファッション・ライフスタイルなど隣接するカルチャーが一堂に会する、領域横断型のアートフェスティバルです。ジャンルや表現の枠を超えて多様なクリエイションが交差する場、アートとの新しい出会いを創出することを目指し、天王洲運河一帯を舞台に、アートエキシビション、アートフェア、ライブパフォーマンス、トークセッション、マーケットなど多彩なコンテンツを展開しています。本年のテーマは「再発見(Rediscovery)」。日本のなかに息づく感性や記憶、無意識のうちに受け継がれてきた価値観を多角的に見つめ直し、多様な文化や美意識をフェスティバルを通して提示します。
そのメインコンテンツのひとつであるアートエキシビション「Ahead of the Rediscovery Stream」に、ASNOVAは足場を協賛。“アートと足場”という異なる世界の出会いが、どのようにして実現したのでしょうか。空間デザインを担当したガラージュの渡辺瑞帆さん、キュレーターの吉田山さんと渡邊賢太郎さんの3名に加え、ASNOVA 取締役 仮設事業本部長 森下哲さんとで対談を行いました。
Text:光田 さやか
Photo:小林 翔
PROFILE
吉田:今回のフェス全体のテーマは「再発見(Rediscovery)」です。単に「発見」ではなく「再発見」なんです。もともと身の回りにあったものを、改めて見つめ直し、価値を再発見してもらえたらと思いました。リンパをマッサージするように、価値や感情が自分の中を巡って、それが周囲にも流れていくような感覚で「Stream(流れ)」としたんです。
アートはもともと、個人の経験や発見から生まれ、それが何かの形に昇華されたものです。理想だけを追い求めて、現実を切り捨てるのではなく、理想と現実のあわいをどう生きるか。制限があるからこそ見えるものがあり、そのグラデーションの中でどうバランスを取っていくかが大切だと思っています。
渡邊(賢):僕は普段、京都を拠点に活動しているのですが、ここ数年、外国人観光客が一気に増えましたが、彼らの期待に応えようとするあまり、“過剰な日本らしさ”が前面に出てしまう場面もあります。「自分たちが知っている日本って、こんなんだったっけ?」と感じることも多いんです。だから今回の「再発見」というテーマは、僕自身にも響きました。
アーティストたちが作品を通して日本の文化や歴史を見つめ直し、そこからまた新しい視点を得ていく。それは過去を懐かしむことではなく、過去を振り返ること。そこから未来につながる何かを見つけることが「再発見」なんだと思います。
渡辺(瑞):私たちは今回の空間デザインを考える上で、まず天王洲という土地をフィールドワークしました。この街の成り立ちを調べていく中で、かつて黒船が来航した時代、天王洲が台場としてつくられた歴史にたどり着いたんです。当時の人たちは、わずか8ヶ月で山を切り崩し、地形をつくり変えました。「人が地形をつくってしまうほど、時代を切り拓くための勢いがあったんだ」と感じたんです。
今の世界情勢を見ても、当時と同じように差し迫った状況であると感じます。そうしたなかで、再び「地形のような何かをつくり出す力」が問われているのではないでしょうか。その延長線上で、今回の展示で足場を使うことは必然だったようにも思います。
渡辺(瑞):大きく3つあります。ひとつは、作品ごとに固有の展示空間をつくること。次に、その空間を巡っていく道の中に驚きや発見があること。そして、4日間という期間を「仮設的な舞台」としてデザインすることです。
私たちはこれまで、各地の祭りや野外舞台をつくるときに足場を使ってきた経験がありました。そのため今回も、仮設舞台をどう作るかを考える中で自然と「足場を使おう」という話になったんです。
森下:そこで足場を使うという話が出たのは嬉しいですね。以前、東京藝術大学の展覧会で我々が足場を協賛したことがきっかけで、今回のお話に繋がったと聞いています。嬉しいことですね。
吉田:僕は常々、アートの展示は「夢をつくる」ということと同じだと考えています。しかしその一方で、大量の廃棄物が出てしまうことに対して違和感がありました。イベントで形になった素材が、会期を終えて分解され、そのままどこかへ旅に出るような、そんな感覚を実現したかったんです。
今回、ASNOVAさんにお願いしたのは、まさにその点です。足場なら、一時的にここに集約されるけれど、終わったあとまた別の現場へ帰っていきますよね。素材に循環を感じさせる展示にしたかったんです。
渡邊(賢):僕も同じ思いがありました。芸術祭やイベントって、基本的にはどれも「仮設」です。組み立てて、解体して、また保管しておく。そのための場所やコストがいつも課題になると思っていました。その点、ASNOVAさんのように「借りて、返す」という仕組みがあると、エコロジカルな関わり方ができますよね。日本の祭りの文化も昔からそうだったと思うんです。そのときだけの舞台をつくり、終わればまたバラして保管する。文化や芸術も、そうやって循環していくのが自然なんじゃないかと感じました。
レンタルという仕組みそのものが、アートと産業をつなぐキーワードになっていたように思います。
森下:東京藝術大学での展示のときは、通路や土台としての使われ方でしたが、今回は高さのある空間構成で、「鑑賞者の目線をデザインする」という発想が新鮮でした。
強度面での相談を重ねながら設営してくださったのですが、構造物としての完成度の高さに「プロの仕事」を感じましたね。我々だけではこのような造形は思いもつかないと思います。足場というと、どうしても建設現場で使う「安全に作業を行うためのもの」という印象が強いのですが、「仮設」という特性があるからこそ、自由度が高く、空間デザインに新しい価値をもたらしていたのかもしれませんね。
渡辺(瑞):まずご協力いただけたこと自体が本当にありがたかったです。これはあとから伺ったことですが、ASNOVAさん自身が「足場を貸し借りする」という価値にとどまらず、「モノの用途を超えていく」ことを大事にされていると知り、その部分でも思いが一緒だったんだなと気づきました。だから、今回のテーマとも自然に重なったのだと思います。
吉田:サーキュラーエコノミーの観点でもそうですが、作品というのはアーティストと紐づくものです。アーティストが亡くなると、その作品はアップデートが止まってしまいます。つまり「貸し借り」だけの関係になってしまうんです。でも、それだけではなんの変化も生まれません。僕は、アーティストがつくった作品という価値をどう循環させていくかを考えていて、それもひとつのサーキュラーエコノミーだと思っています。価値を埋蔵させるのではなく、発見して、受け入れて、次の時代に合わせて再発見し、価値をグレードさせていく。それが僕のやりたかったことなんです。扱うものは違っても、ASNOVAさんが掲げていることと、とても近いと思いました。
森下:ASNOVAとしても、足場の「活躍の場」が広がる可能性を感じました。今回の展示では、現場のように荷重がかかるわけでもなく、足場にとっては負担が少ない中で、その構造美や柔軟性を最大限に生かしていただいたのだと思います。
渡邊(賢):僕はシンプルに、ASNOVAさんが「足場を使って楽しいことをできないか」と考えていることがうれしかったです。これまでのいろんな記事を拝見して、足場以外の使われ方を考えている人たちなんだなと感じました。いろんな方法を模索し、コラボレーションして、それを楽しんでいるのが伝わってくるんです。僕らもアーティストの作品をどう空間や見せ方で生かすか、つまり「可能性を楽しむ」ということを大事にしています。 人をワクワクさせたりドキドキさせたりすることを、ASNOVAさんも同じように探っているし、楽しんでいる様子が伝わってきて、すごくシンパシーを感じました。
吉田:アートでも産業でも、文化でも同じだと思いますが、誰かがやったことに対してインスパイアされて、別の人が「自分はこうしてみよう」と動く。そうすることで、また次のアイデアの種が生まれていくのだと思います。僕らの今回の取り組みも、どこかで誰かの目に触れて、また別の形に発展していくかもしれないですよね。まさに、イノベーションが起き続けていく感覚。活力が生まれ続けているということです。僕たち自身もASNOVAさんから活力をもらいました。
森下:アーティストがどう見せたいかという思いを形にする手伝いができたのは、とても貴重な体験でしたね。私たちも楽しみながらサポートさせていただきました。
渡辺(瑞):足場が「足場以外の用途」で使われることを、扱う人自身が楽しんでいるのが本当に大きいことですね。ASNOVAさんは、こちらの提案をご理解いただき受け入れてくれたので、前向きに制作を進めることができました。「じゃあこうしよう」「ここはこうしたら」と、その場でどんどんイノベーションが起きていったのは、私も感じています。
渡辺(瑞):私は普段から建築の現場に関わっているので、生活と産業が渾然一体になっている場所に身を置くことが多いんです。だからこそ、アートの現場でも同じようにそれを体現できたことは、新しい希望のように感じました。
吉田:アート自体も、ひとつの産業として見られると思うんです。アートは「今を生きている人」がつくるものですし、産業もそうです。大きな違いはないと思うんですよね。ただ、理想だけでは何もできないし、誰にも見せられない。「誰にどう見せたいか」を意識することで初めて現実になります。産業の力を借りて、アーティストの手によって、理想が目の前に立ち上がる。アートもまた、社会を支えるインフラとして考えられるんじゃないかと思います。
渡邊(賢):アートが産業に刺激を与える、という話はよくあります。でも実際には逆もあって、産業の動きや仕組みからアートがインスピレーションを受けることもある。アートと産業は、そういう相互作用の関係なんですよね。
ASNOVAさんのように、足場というインフラを軸にしていろんなプロジェクトやイベントを連携していくことで、他の業界にもいい影響を与えられると思います。それが数珠つなぎになって、また大きな動きにつながっていくのかもしれない。お互いにいい相乗効果を与え合える関係だと思います。
産業とアートは一見断絶しているように見えますが、実は根底の部分でちゃんとつながっているんです。普段は見えにくいけれど、今回の協働を通して、それが少し見えやすくなった気がします。
森下:今回のエキシビションでは、階段やステージの構造がとてもきれいに作られていて、足場が使われていることにいい意味で気づかない人も多かったと思います。しかし「見えないところで足場はこんなに活躍している」ということをもっと伝えていけたらいいのかもしれません。そうなれば、私たちとしてもお役に立てる場面が増えるでしょうし、助かる方々も増えていくと思います。
今回のフェスでは、若手アーティストをどんどん活躍させていくという趣旨がありました。「日本を元気にしたい」「若者を元気にしたい」という想いに、私たちらしさを重ねられるのではないでしょうか。
私たちのような存在がいるからこそ、できること、つくれるものがある。それを支えていくのがASNOVAの役割だと思っています。
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