
【循環型プロジェクト対談vol.1】 循環型社会への第一歩。ASNOVAが描く持続可能な成長曲線
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Text:光田 さやか
Photo:小林 翔
PROIFILE
足場レンタルを収益の軸に据えつつ、「貸す・借りる」を越え、より資源が循環する仕組みへ。ASNOVAは、さらに未来へと視野を広げ、循環型社会(サーキュラーエコノミー)の実現に踏み出しました。
本連載では、そのために社内で立ち上がった「循環型ビジネス探索プロジェクト」の様子を全3回にわたってご紹介していきます。vol.1では、なぜ今この挑戦に踏み出したのか、そして持続可能な成長曲線をどのように描いていくのかを、上田桂司代表取締役社長と加藤大介取締役 管理本部長に伺います。
Text:光田 さやか
Photo:小林 翔
PROIFILE
上田:これまで私たちは、足場レンタルを事業の基盤として約10年続けてきました。足場という素材を社会インフラとして見たときに、現場で足場が不足しているというニーズがあったんです。特に「くさび式足場」のレンタルにおいては同じようなことをしている企業がなかったこともあり、業界ではトップシェアを獲得し続けてきました。2022年4月21日には名古屋証券取引所ネクスト市場へ上場、さらに2023年12月25日には東京証券取引所グロース市場に上場するまでになりました。
その後も、ニーズに応える形でさまざまな新規事業に挑戦してきました。やはり時代とともに進化していくためには、ニーズに応える企業でなくてはならなかったんです。
さらに2024年〜2025年にかけてはM&Aにも取り組むなど、今まで自社だけではやってこなかったようなことに挑戦するようになりました。そういう意味では、やってみてわかったことがたくさんあります。たとえば、初めての出来事にどう向き合うかとか、組織の在り方をどう考えるかとか。そういうことを経験する中で、会社という存在をあらためて客観的に見ることができたと思っています。
加藤:社内の雰囲気も大きく変わってきたと思います。上場する前までは、どちらかというと「いまあるものを丁寧に磨き上げる」という感覚が強かったんです。でも上場してからは、やることがどんどん増えてきて、「やってみないとわからないこと」にも積極的に挑戦していくようになったと思います。
誰もやったことがないことに取り組む以上、いきなりうまくいくなんてことはありません。だからこそ、「新しいことをやる時はこういうところに気をつけよう」といった雰囲気が社内に蓄積されてきた感じはあります。そこへ「失敗してもいいから挑戦してみよう」という空気が生まれてきたんですよね。
私としても、困っていることは何でも言っていいというスタンスを打ち出してきました。その結果、心理的な障壁がだいぶなくなってきたと感じます。
上田:もちろんこれまでの事業も順調にきていたのは事実ですが「このままではいけない」と強く思うようにもなりました。どんなに変化や顧客のニーズに対応してきたとしても、貸す・借りるの効率化だけに留まってしまうと、その先にある未来がだんだん見えにくくなってくるんです。私たちが目指しているのは、ステークホルダーと良い関係を築きながら、持続可能な成長に挑戦する会社です。そのステークホルダーには、当然お客さまや取引先だけでなく、未来の世代も含まれているのではないかと私は考えています。
なぜなら、私たちは「未来」の世代の利益を「今」搾取してしまっているのではないか、という危機感があるからです。
「土地は子孫からの預かりものだ」という言葉がありますが、それと同じで、未来から搾取するような経営をしていては、決して未来と良い関係性を築けているとは言えないですよね。だからこそ、目に見えるものだけでなく、目に見えない未来も含めて事業の設計を考えるようになりました。
足場レンタルを続けてきたからこそ、今回の循環型ビジネスの必要性にも気づけたと思っています。限りある資源を、いかに無駄なく、意味のあるかたちでまわしていけるのか。いいビジネスだなと思いながらやってきましたが、改めて、これまで私たちがやってきたことの意味を再認識することができました。
上田:そもそも日本って、もともと循環型の文化を持っている国なんですよ。たとえば江戸時代なんて、古着屋だけで江戸の町に4000軒もあったと言われているほどです。服も、雑巾やハギレにして最後の最後まで使い倒していましたしね。そういうふうに、限りあるものを大切に使い続けるっていうビジネスを、昔の人たちはちゃんとやっていたんです。だから私たち日本人にとって、環境や循環への取り組みは決して新しいことではなく、むしろアイデンティティの根幹にあるようなものなんじゃないかと思っています。
加藤:そうですね。循環型という言葉だけを聞くと「最先端でスマートなもの」というイメージもありますが、もっと「人間性への回帰」みたいな感覚のほうが近い気がしています。
今はデジタル化もどんどん進んでいますが、その一方で、対面でのつながりや人と人との信頼関係も大事にしなくてはいけません。今回の「循環型ビジネス探索プロジェクト」もそうです。あえて何度も対面で顔を合わせて対話することを重視しています。そういう昔から大切にされてきたものと、いま再注目されている価値を掛け合わせていく。そこがASNOVAらしさなんじゃないかなと思うんです。
上田:私たちは、足場業界らしくないって言われることも多いんですよね。でもそれって悪いことじゃなくて、「らしくないことをあえてやる」っていう意識があるからこそ、さまざまなチャレンジができているんじゃないかと思います。
実際、今回のM&Aでもいろんな人に言われましたよ。「なんで最初のM&Aが海外企業なの?」「なんで国内企業じゃないの?」って。普通の上場企業だったらやらないことを、私たちはあえてやる。真面目に着々と積み上げてきた会社なのに「変わってるね」「でもASNOVAならやりそうだよね」と言われる。そういう「らしさ」が、やっぱり私たちの強みなんだと思います。
加藤:ASNOVAは、他の業種との境界線に存在しようとしているのかなと思います。業界のど真ん中で「らしい会社」として生きるんじゃなくて、あえて境界線に立って、新たなものと出会いながら、自分たちの立ち位置を見つけていく。その柔軟さが、ASNOVAの大きな武器だと感じています。
上田:これまでやってきたことの蓄積を私たちの強みとしながら、「ASNOVAだからこそできる」ということに挑戦していきたいです。「循環型ビジネス」はまさにそういう新たな土台となってくれると思います。それも、一部の人だけが考えるのではなく、世代や役職、性別も超えて社員みんなで未来をつくっていく。パーパスやビジョンといった大きな方向性を共有しながら、一人ひとりが自分で考えて行動できるような、自走型の組織でありたいですね。
加藤:今の時代は本当に変化が激しいですから、これまでのように「立ち止まって考える」ことをしていられないかもしれません。だからこそ、ときには「走りながら考える」ような気持ちでいることが大切だと思います。他のメンバーと話しながら、自分の仕事の意味を見直したり、変化し続ける組織の中でどうしたら自分は役割を果たせるのかを考えたりしていってほしいと思います。
上田:今まさに、「循環型ビジネス探索プロジェクト」がスタートしているところです。どんなふうになっていくのか、私自身も変化を楽しんでいきたいです。
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